ボランピオ

vol.20 (2018年度最終号)

不登校児童が未来へ歩むための道標~インタビュー「NPO法人すたんど」~

2018年03月31日 09:22 by youi_center
2018年03月31日 09:22 by youi_center

 「今日は学校、行きたくないな」  毎日学校へ通う中でそう思ったことが、皆さん一度くらいはあるのではないでしょうか?
 体調が悪い。友達と喧嘩をした。クラスや部活でいじめを受けている。何となく教室に居づらい。様々な理由から、長期間学校に行けない――いわゆる「不登校」になっている子どもたちが、学校に、社会に歩み出せるようになるための手助けをする。そんな活動をしているのが、NPO法人「すたんど」です。
 今回、私たちは、社会福祉士になるための授業を受ける中で関心を持った「不登校児童の支援」について、どのような活動や支援を行っているのか、私たちにできることは何かを知るために、NPO法人「すたんど」の小林さん、そして「すたんど」と同じ系列で18歳以上のひきこもりの方を支援している団体であるNPO法人「リスタート」の林さんにインタビューを行いました。

 NPO法人「すたんど」とは?
 NPO法人「すたんど」は、岡山県内を中心に18歳以下の不登校の子ども、親への支援を行っている団体です。活動内容は、「訪問支援」「学習支援」「同行支援」「集団支援」「短期集中型支援」「居場所提供」「すたんど農園」「カンファレンス&カウンセリング」と多岐にわたります。支援の流れは、親から相談を受け、子どものもとへ訪問して面談を行い、その後活動をしていきます。最初は、本人の興味のある、本人に合った個人的な活動や外出を行い、その後、他の利用者と一緒にする活動を行っていくそうです。
 県内ならどこでも訪問をし、活動支援を行っています。また、活動は本人の希望に合わせた曜日に行うことによって、本人が活動しやすい環境を作っています。
 その他、「いじめ対策」や「貧困支援活動」といった子どもへの支援活動も行っています。

  

 不登校の原因と支援方法
不登校の原因とは?
 子どもが「不登校」や「引きこもり」の状態になっている要因にはどんなものがあるのでしょうか? 一口に「不登校」「引きこもり」といっても、様々な要因が考えられます。小林さんはその要因の一つとして「家族間でのコミュニケーション不足」があるとおっしゃっていました。つまり原因は「学校」だけではなく「家庭内」にある可能性もあるということです。
 もちろん、学校でのいじめや、本人に知的・発達の障害があった場合はそれによって起きてしまったトラブルを避けるためにという理由で不登校になってしまう場合もあります。しかし、学校であった悩みやトラブルなどを家で話すことができず、それが不登校へつながってしまう場合もあるそうです。

理解者と居場所を増やすための支援
 また、不登校の子どもは「親に迷惑をかけている」「申し訳ない」という思いを抱き、親は「どうにかしないといけない」という思いに駆られ、さらに親子の間の感情にギャップが生まれてしまいます。「すたんど」では、そういった親と子の間に立ち、話を聞いたり、活動を行ったりしています。双方の話を聞く際には冷静かつ客観的に話を聴き、偏った見方にならないように気を付けているそうです。そして、支援は不登校になっている子ども本人だけではなく、不登校に不安を感じている親にも行っていきます。親の抱えている不安を取り除き、子ども本人のことを家庭内で認めていくことで、子供の理解者を、そして居場所を増やしていくのです。

 「いじめ」を解決していくために
 「不登校」のステージは学校と家に分けられますが、「不登校」の原因に成り得る「いじめ」についてのステージは学校になります。「すたんど」ではそのようないじめ対策としてどのようなことしているのでしょうか?
いじめを解決するための過程
 いじめ対策としてはまず、どうしていじめが起きているかその原因を探っていきます。かなりの介入が必要となってはきますが、第三者が調べることによって客観的な目線で正しく状況判断をし、問題解決に努めることができると林さんは語っておられました。いじめの原因が判明すれば、つぎは周りの環境から改良していき、そして本人の気にするところを少しずつ改善していくそうです。いじめられる対象は、知的・発達障害を持つ子となる場合が少なくありません。これからの教育環境には、そういった面にも理解ある人材が必要となってきます。

 私たちにできることは何か?
 大学生である私たちにできることのひとつは、ボランティアに参加することです。大学生による家庭教師式支援や、イベントスタッフなどのボランティアを、多くの団体は募っています。歳が近い私たちだからこそ子どもたちの悩みを理解し、寄り添えることもあるのではないかと感じました。例えば、「すたんど」では現在、ホームページにて「ユニリンクプロジェクト」という不登校支援を行いたい大学生のボランティアを募り、全国に「すたんど」の活動を展開するプロジェクトを行っています。また、来年度からは新しく女子不登校児生徒向けの、女性のボランティアを募り教育支援や活動を行う計画を進行中です。男女混合での活動に参加しづらいと感じたり、同性の方が気軽に話すことができると感じたりしている女子児童生徒が利用しやすい居場所づくりを展開しつつあります。このような活動に参加することが、私たちにできることではないでしょうか。
 また、現在の子どもたちを取り囲む環境や、知的・発達障害についてなど児童福祉に関する分野について、さらに深く学び、その情報を人々に発信・共有していけるような活動を行うということも私たちにできることのひとつだと思います。自分たちで知識を完結するだけではなく、様々な人と情報を共有することで、「不登校」「いじめ」についての理解も深まるのではないかと思います。

 インタビューで感じたこと
 今回のインタビューを通して、「学校」というフィールドだけが問題になっていると思っていた「不登校」「引きこもり」の問題のフィールドに、実は「家」というフィールドも含まれていることに気がつきました。その原因も、「いじめ」だけではなく、親子間でのコミュニケーション不足もあると知り、「不登校」「引きこもり」が複雑なものだということを学びました。そして、不登校になっている本人に対する支援だけではなく、その親への支援や周りの環境の改善の重要性ということも感じることができました。また、「いじめ」に関しては、知的・発達障害に対する周りの理解不足という要因もあります。そういった障害に関する理解不足を補うような取り組みも必要であると感じました。
 インタビューの中で、林さんは「本人が後ろを向かないように、止まらないように、左右をそれないようにし、見守るのが『すたんど』の行う支援」と語っておられました。その言葉を聞いたとき、「すたんど」は、不登校の子どもたちが扉を開け、学校へ、社会へ、未来へ歩み出していくための道標のような存在なのだなと感じると同時に、多くの人に「すたんど」の活動を知ってほしいと思いました。
不登校で悩んでいる方、そういった方の力になりたいと思う方が、この記事を読み、「すたんど」の活動を知り、興味を持っていただければ嬉しいです。また、近年引きこもりや不登校の数は増加していますが、今回取材したような支援団体も発展しています。これからの展開に今後も注目したいと思います。




ノートルダム清心女子大学人間生活学部人間生活学科
社会福祉士課程3年 津山 翠璃・山本 裕理

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