"「せんゴミ」ってきいたことありますか?
2014年4月。1000人でごみ拾いをしようと呼びかけ、多くの人の参加を募った「せんゴミ」が開催されました。
多くの人が参加し、翌日の新聞にも大きく取り上げられました。
今回の企画にはどのような魅力があり、どうして多くの方が参加したのでしょうか?
「せんゴミ」の仕掛け人に話を聞きました。
"「ごみひろい」を企画した「女子大生」
「せんゴミ」といえば「女子大生」。
そんな風に知られているのはこのようなキャッチコピーを打ち出しているからではないでしょうか。
「現役女子大生「加野のぞみ」が1日で1000人と出逢い、
一緒にゴミを拾ったら、岡山からゴミがなくなる!
そんな素敵な世界にしたい!という夢を叶えるイベント、『せんゴミ』」
ポスター、チラシ。
どれにも「加野のぞみ」の名前をみることができます。
「私、実家ではずっとゴミ拾いをしてたんです。
お母さんが土曜日にゴミ拾いを企画していて、小学校2年生頃から高校3年生くらいまで朝早く起きてやっていました。
なので、ゴミ拾いは"特別なこと”ではなく、"日常的なふつうのこと”だったんです。」
"目につくゴミ。どうせだったら楽しくやりたい。
加野さんが岡山に来て感じたのは「夜に出る街のごみ」。
大学生になり、居酒屋のアルバイトを始めた加野さんは「バイト帰りに駅前を通るととても汚れている」ということが気になりました。
朝になると駅の職員さんが掃除をし、どうやら綺麗になっているようなのですが、「すてる人が多くいる」ことや、また「仕事としてしか拾われないごみ」ことが気になり始めます。
"ひとりではなく、仲間と。
加野さんの言葉が大きなきっかけになったのは間違いのない事実ですが、一方でひとりでつくったものではありません。
加野さんも所属する、学生によるまちづくり団体の「MACHI FES」です。
団体のリーダーである堀さんによると、
「MACHI FESは学生の「やりたいこと」を学生の手で楽しく実現するために、2013年に発足した団体です。
学生が楽しんでまちにでていく。
そして地域の人にも楽しさを還元していく。そんなプロジェクトを実施しています。」
といったように、学生が楽しみながら地域の人を巻き込んでいく企画を展開中。
2013年はプレとして2回ほどフェスティバル形式の企画をされています。
「去年プレの企画を実施して、春に何か大きなことをしたいねという話になったんです。
その時にミーティングをしていて、出たアイディアがゴミ拾いでした。
もちろん提案者は加野さんでしたけど(笑)。
とにかく楽しくやりたい!ということだったので、最初はクリスマスにサンタクロースの恰好して・・・、というような案も出てたんですが、最終的に春に開催することになったので、別の形での打ち出しが必要になりました。」
打ち出しかたを悩んでいたとき、ふと出たのが「女子大生」というキーワード。
「多くのごみ拾いの企画があるけれど、
たったひとりの女子大生個人が「ごみひろいしようよ」なんていうのは珍しい。
MACHI FESの企画ではありますが、あえて女子大生から、というのに重点をおいて、多くの方が参加してみようかなと思えるものになるようプロデュースしました。
1000人、というのはたくさんいれば怖くないというか、多数派のイメージ。
みんなでやる大きなものにしたかったんです。」
"もっとやれるんじゃないかと言われた。思えた。
そうして企画をするなか、多くの人からアドバイスをもらう機会がありました。
「人が動くのは感動と共感から。まだ本気になりきれてないんじゃないか」
いただいたアドバイスの中には上のような厳しい一言もありました。
多くの人を動かすのにまだ足りてないのだろうか、何をすればいいのだろうか、加野さんをはじめ、みんなが悩んだ言葉でもありました。
「その言葉をきいて、私、毎日ごみ拾いしますって言ってました。」
――それって、みんなに了承を得て? 大変じゃありませんでした?
「あぁ、それでいうと、みんなに『する?』って聞くんじゃなく、『ひとりでもする!』って決めて言いました。もっとやれるんじゃないか、って言葉には、たしかに!って思えたので」
――なるほど。「決める」のは大切ですね。
「ただもちろん1人だと寂しいので、毎日どこでゴミ拾いをするか決め、メンバーにも声かけをしました。
一か月弱、毎日して、メンバーの半数以上が集まる日もあれば私一人の日も。
そのなかで活動をPRしたり、共感者を増やしたりしました。
大変なこともあったけれど、地域の方が声をかけてくれたりしたのはすごくうれしかったです。」
共感をいかに集めるか。
自分がまずはどこまでできるか。
加野さんにとっては、就職活動傍らに精一杯頑張った一か月になりました。
"実際にやってみて。
「驚いたのは、朝早くから参加してくださった人が多かったこと。受付が始まる前から多くの方が楽しみに待っていてくださいました。」
朝から夜まで1日がかりで開催され、老若男女を問わない形で多くの方がごみ拾いを実施してくださったそうです。
おじいちゃんから3才になったばかりのお子さんまで、多くの方が参加してくださり、かわいくマスキングテープでデコレーションされた軽トラックには、多くのゴミが詰め込まれました。
"一時的ではないイベントに。
イベントという形でしたが、多くの人の心に「その後も」何かを残したようでした。
堀さん:「多くの人に言われたのは『せんゴミ』に参加してから、ゴミに目が行くようになったということ。
なかには、自転車のかごにごみ袋をとりつけてくれる人だとか、鞄にごみ袋を忍ばせたりなんて人もいました。」
加野さん「ごみ拾いの魅力は"みんなが望むこと”をしていることにあると思います。
そこには感謝もあるし、みんなで同じゴールを持ちやすく、仲間になりやすい」
堀さん:「それから意外とやってみると楽しいっていうのもあるよね。意外な発見もあるし」
"これからについて
そしてこれから「せんゴミ」の企画はどうなっていくのでしょうか?
最後におふたりに聞いてみました。
「また『ゴミ拾い』の企画はしてみたいなと思っています。
その時は「学生」にしぼってやってもいいかなと思っています。
というのも、私自身が中学生、高校生の思春期にさしかかった時、ゴミ拾いをすることが恥ずかしくなった時期があるんです。
もっと当り前に、楽しく取り組める。そんな機会をつくっていきたいなと思います」
(加野さん)
「僕も『楽しいこと』を大切にしています。
ゴミ拾いって、誰かのためにっていうイメージはあるけれど、自分から楽しんでやろうよっていうイメージはあまりない。
やりたいっていう自主的な思いがあると、その行動はすごく楽しくなるし、楽しいもので回ってる社会は幸せだなと思います。そういう意味で今回の「せんゴミ」はよかったと思うし、この流れは続けていきたいですね」
(堀さん)
二人から共通して挙がったのは「当り前の行動を楽しく、多くの人が関われるようにする」ための工夫に対しての想い。
これからの二人に、そして学生たちの動きに期待です。
MACHI FES : https://www.facebook.com/MACHIFESokayama
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