ボランピオ

2016年01月号

【活動紹介】院内学級での学習、復学の支援、交流活動~

2016年01月31日 12:53 by youi_center
2016年01月31日 12:53 by youi_center

院内学級での学習経験を生かして

NPO法人「ポケットサポート」代表 三好祐也さん。


ネフローゼによる病気から、入院生活を送り、小中学校時代、院内学級での学校生活を自ら体験する。大学に進学後、将来は院内学級の教師に就く道を望み、病気の子供の研究を学んだ。
しかし、院内学級の教師の道が険しいことを知り断念。

 

10年にわたるボランティア経験から団体を作り活動する道を選んだ。退院後に通常学級に復学した子どもたちは一般の学校での学習や生活への身体の慣れに時間を要す。
院内学級に通う子供たちに誰もが抱える、勉強したい遊びたいといった、ごくあたりまえのことを叶えてあげたい想いで始めた。 

病気の子たちと積極的な交流

入院中の子どもたちの心境は複雑なもので、気持ちの変化やエネルギーの上がり下がりを感じながら支援するのは難しく、正解はないという。子供の素直な「遊びたい」「学びたい」という気持ちを引き出し、相手を自分に引き寄せるのではなく自分から入っていくのがコツだと話してくれた。また、病気の子どもとしてしかみられていない一方で、本人のパーソナルな部分を認めてあげるようにしているそうだ。取材中に、カバンからカードゲームを取り出してみせてくれ、アナログなゲームなどを用いながら会話していき、子どもとの距離を測るんだと教えてくれた。そして、ご自身の入院中に味わった経験や辛さも交えていくといった病気の子ども目線での交流も忘れないよう心がけているという。

 

院内学級という特殊な環境

活動している中で苦労されている点は、院内学級での子ども達の状況や環境を理解してもらうことだという。院内学級の教師は必ずしもスペシャリストではない。体調の変化さえ見落とす事もある。ある事例では、赴任してきた院内学級の教師が出席しなかった子に対して、病室を訪れ「休むなら報告しなさい」と注意したため不登校になってしまったというケースもあったそうだ。

 

広がるサポート活動

去年秋、NPO法人を設立され、ボランティア10名で始めた活動は今では、当事者、医療関係者、教育関係者を含む、会員数が50名にもなる団体になった。「活動していくと理解が深まり、子どもたちが過ごしやすい社会になると思うんです」と三好さん。活動の範囲は院内学級のある小中学校のみに留まらない。今では、高校に進学する子たちに高校卒業までの学校生活を送る中で安心して治療できるような環境を整えるような啓発活動も行っている。

また、学校卒業後も就労の壁にぶつか(ってい)る。当事者に対してポケットサポート内での雇用に結びつけるという試みも始めようとしている。病気の子たちが就労できる場として、その一端を担えたらと話してくれた。自分の想いの伝わった子どもたちがまた、次の世代を教えていく。当事者同士だからこそ、共感の得やすい素晴らしい循環だ。


様々な交流・課外活動を通して

不足しがちな社会体験を補うため様々な課外活動を企画している。院外での学習体験として、三好さんのご出身である直島への芸術鑑賞遠足も行った。当日は、島内にある診療所の医師、看護師と連携して緊急時に対応できるようにして臨んだが、内心は急な体調の変化などを気にしていたため不安もあったと話す。

また、外出困難な子どもたちに院内で手作りの桜の木を用いた花見や芸人を呼んで、屋台を作り縁日の夏祭りをしたりなど、病気の子どもたちが屋内にいても四季が感じられるようなイベントをスタッフと行っている。

 


今後の活動の展望
これからの夢や目標として「通院する子も、入院中の子も気楽に立ち寄れるような場所作りがしたいんです」と三好さん。病気の子たちが悩みや不安を共有し、ピアカウンセリングを行えるような場所を作りたいそうだ。ご本人の朗らかで前向きな性格なら夢はきっと叶うだろう。

(ソーシャルライター:臼井進)

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