ゆうあいセンターのオープンスペースには、800冊以上の蔵書を有する「図書スペース」があります。
ボランティアやNPOに関する情報、先進事例、そしてアイディアが集う場所として、日々多くの方にご利用いただいています。 ジャンルはNPO、ボランティア、経営、国際協力、社会貢献、まちづくり、環境、福祉など。
その中から一冊、ソーシャルライターが気になる本を選び、書評を寄せていただく、「ゆうあい読書感想文」。
第一弾は加藤哲夫さんの「市民の日本語」です。
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「市民の日本語」
著者 : 加藤 哲夫
出版 : ひつじ書房
◆本の概要
近代社会において、常に正しいと考えられていた声が大きく論理的で理性的な少数のリーダーが考え、判断したものに周囲の人々が従っていくというスタイル。
日本の経済成長と共に正しいと思われていたこの考え方に疑問を投じ、市民と行政、大人と子供、当事者と傍観者…往々にして反対の立場に立って話す事が多くなりがちで、実はお互いがお互いを理解しないまま時間だけが過ぎている両者のコミュニケーションを本当の意味で実現させていく為の手引きとなる1冊である。
作者自身の市民活動における経験を基にした本なので、本文中に出てくる『ことばはその人の中からその人の力で出てこなければ力にならない』という一文がこの本を読み終えると強く、深く感じ取ることが出来る。
◆この本をお薦めしたい方、読んだ感想
①どんな方にお薦めしたいか?
自分と同じ子育てをしている親世代。また、各地でコミュニティー維持に奮闘している/これからするであろう中山間地域の若者の皆さんに、今一度自分を顧みるという意味でお薦めしたい。
②感想
私は、4歳の女の子の親であり、会社員であり、マイホーム購入に伴い見ず知らずの地に根をはる事となったコミュニティ1年生。
これら3つの顔に加えて4つ目の顔…中山間地域の後継者という顔も持っている。
この本は、ゆうあいセンターのスタッフの方から紹介頂いて手に取ることになったが、今の自分が手にするべき本であったといっても過言では無い。最近は平仮名もマスターした子供との向き合い方、会社での仕事における戸惑い、見知らぬ地域で妻、子供を含めてうまくやっていけるのか、そして車で行けるとはいえ日々深刻さを増している故郷への憂慮。本を手に取ると、これらのボンヤリとした不安をバシッと言い当てられたというか、はっきり見えるメガネをかけてくれた様な気持ちになった。この本は作者:加藤哲夫氏の長年に渡る市民活動の実体験を基に書かれており、理論だけではなく、失敗例や当時を回想したりしているためタイトルほど仰々しいものではない。
しかし、言っている事は非常に深い。
『人は自分が見えない』、『人間は傷つけ合わないなんて事は有り得ない。迷惑を掛け合うし、傷つけ合うんだ』、『多数決の前に深い議論』…他にも多くの言葉が心にグサッと刺さるが、改めて活字で読み返すといかに自分が考える事を避けていたか。子供に考える機会を与えず、相手の用意した答えが正解だという考えを持った大人にしてしまうものであったか。それがいかに恐ろしいことなのか。
作者の言葉は波状攻撃のように襲ってきたが、その波は確実に体に染み込んでいるのを実感している。
『目を背けない』、『自分の言葉で相手に伝え、指摘は真摯に受け止める』この2つをまずは家庭から実践して行こうと思う。
(竹中)
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