ボランピオ

vol.31(2021年02月号)

【高校生ボランティアにインタビュー】「べとぼらさん」@矢掛高校

2021年02月05日 10:37 by youi_center
2021年02月05日 10:37 by youi_center

 「べとぼらさん」の皆さんは今年度、ゆうあいセンター主催の「第8回 岡山高校生ボランティア・アワード」にて、2020年11月28日(土)に活動について発表をされました。 タイトルは「国境を越えたつながりin YAKAGE(ベトナム=日本語教室)」です。 発表はオンラインで行われ各エントリー団体の発表時間が5分間という時間の制限もありましたので、アワードの当日には聞ききれなかった、活動への思いや今後のことなどを改めてインタビューさせていただきました。

 インタビュー取材には2021年1月にゆうあいセンター・スタッフ3人が矢掛高校に伺い、ゆうあいセンター事業スタッフで、現在、岡山高校生ボランティア・アワード事業を担当しております岸 祐生が中心となり、べとぼらさんに参加している岡山県立矢掛高等学校2年生、山下優佳さん、近藤久美さん、池田雅展さんにお話をお聞きしました。

 

テキスト・編集:白幡めぐみ(ゆうあいセンター事業スタッフ)
撮影:織田優香(ゆうあいセンターフロアマネージャー

 


  左から池田さん、山下さん、近藤さん

 

■「べとぼらさん」について

岸) 今年度、岡山高校生ボランティア・アワードにエントリーおよびオンラインでの発表をありがとうございました。発表でべとぼらさんの話をききましたが、あらためて、ボランピオの読者のみなさんに、べとぼらさんとは何かを説明していただけますか?

山下) 矢掛町には、現在ベトナム人が200人以上暮らしています。多くは矢掛町の工場で技能実習生として働いているそうで、彼らは日本で仕事をするにあたって、ある程度の日本語は勉強してきており、勤勉な方が多いと言われています。しかし彼らには矢掛町でさらに深く日本語を学ぼうとした時に、それを学べる機会や場所が用意されておらず、仕事場以外で日本語を話す機会も少ないです。
そんなとき、2019年4月に矢掛町日本語教室の会を、元教員の方々が立ち上げました。この会には、矢掛高校の生徒も参加できるような形でした。それで、自分がひとりで、昨年高校1年生のときに参加しました。
会自体は、最初は日本語を教えるというだけだったのですが、自分自身は日本語を教えるだけでなくて、日本文化を紹介して学ぶと良いと思いました。その方が面白いし楽しんでもらいたいと思って、会を主催されている方々に相談し、日本文化を楽しむ時間を別に設けてもらって、ふれあいの時間を毎回することに。そしてその部分をメインに高校生が担当することになりました。

岸) この会は毎月1回しているということですが、どんなことをしてきましたか?

山下) 昨年度は、毎月1回していました。今年度はコロナの影響で、4月~9月は休んでいました。10月は高校生がテストで行けていないです。この前の11月には書道を、12月にはクリスマス会(アメリカの文化だけど、日本でもあるから)をしました。1月はまた中止になりました。
これまでは、季節に合わせたものをしています。お盆は8月にする、などです。案は高校生が考えています。

  


  高校生ボランティア・アワードの発表で活動内容を紹介してくださいました(提供資料)

 

■べとぼらさんの活動で印象に残っているものは?

岸) では皆さんにお聞きします。これまでで印象に残っているのは、どの内容でしたか?

山下) お正月「かるた」です。かるたの内容だとベトナムの方もわかるし、日本語力のレベルがあっていて、楽しめたので良かったです。

岸) 池田さんは印象に残っていること、または、とくにこれまでで大変だったことはありましたか?

池田) 大変だったのは、自分は1回(今年度9月)しか参加していないのだけれども、男子の参加者が少なくて、コミュニケーションがあまりとれなくて苦労しました。

岸) 主催者として高校生はどのように参加しているのですか。

山下) 元教員の方々は毎回同じ人が来るわけじゃないのですが21人います。高校生は2年A組の探究活動の一環としても取り入れていて、毎回高校生で参加する人の人数は変わるのですが、メインで毎回参加しているのが自分で、池田さんと近藤さんは2年生から合流しています。
この前の12月の回は、ベトナムの方が20人以上に増えて、高校生は8人ぐらいでした。

岸) 近藤さんも、9月だけ参加ですか。どうでしたか。

近藤) はい。日本文化をちゃんとベトナム人に伝えられるか不安だったのですが、人形劇で人形を作ったりして工夫して、ちゃんとベトナムの方に伝わって、良かったです。

岸) 人形劇のストーリーも作ったのですか。

近藤) ストーリーは日本昔話からです。それを工夫して、12支を描いて、割りばしに貼って動かしてやりました。

 


  矢掛高校にてインタビュー中の様子 

 

■皆さんの個人的な思いを聞かせてください

岸) なぜこの活動に参加しようと思ったか、実際に参加してみてどう感じているかを教えてください。

山下) 1年生に入学してすぐに、この会が開かれることを知って、もともと高校卒業後の進路を国際系(外国語系)と考えていたから、外国の方々と関わるのは楽しいというのはもともとわかっていたので、参加したかったのです。
最初はボランティアスタッフのお手伝いさんみたいな感じで、あまりベトナムの方としゃべることはなかったんですけど、二回目から自分たちが日本文化を紹介することになったときに、日本語がうまくしゃべれなくて、主語が抜けてしまったり述語がちゃんと入れられなかったりして上手く伝えられなくて、日本人なのに日本語がしゃべれないという悔しさを感じました。それで、次の回からやさしい日本語に直したりして、工夫しました。

岸) 最初は高校生一人だったんでしたっけ?

山下) 昨年度は2年生の先輩もいました。自分は1年生で、一人で入りました。

岸) 近藤さんはどうですか。

近藤) 私は、あまり外国人の人と接することに興味がなかったけれども、探究活動で行きましょうということになって、不安だったのですが、実際に行ってみて他の人とふれ合えることが楽しいと思いました。

岸) そういえば、探究活動というのは、どういう授業ですか。

山下) ESD、座学だけでない自分で計画立てて行動していくという、一連をやるという授業で、その一環としてベトナムのこの活動もあります。

岸) 池田さんはどうですか。

池田) これに参加したきっかけは、学校で授業のときに、今から呼んだ生徒はこの教室に来てくださいと言われて、いくつかに分けられて、ここの場合はこのボランティアとか、別は別と別れていました。呼ばれたときにめんどくさくて、「なんでやらないといけないんですか。いやです」と先生にめっちゃ反抗したけれども、やることになりました。正直いうと、最後まであまりやる気がなかったです。
でもしいていうならば、人と関わる、コミュニケーションをとることができたのが良かったのかなと思います。

山下) もともとべとぼらさんというのが、社会の中でこういう日本に住む外国人と、どう社会を築いていくかというのが、トップストーリー(主題)で言っていて、私のようにガツガツやりたい派の人もいれば、ちょっと良いかなと思うけども自信がない人もいるし、最初から最後までヤダっていう人もいるけど、そのなかで、どううまくやっていけるかというのが大事だと思っています。バラバラだけど、いろんな人でやるというのが大事かなと思っていて、このグループをつくっています。それを承知の上で活動しています。

 


 山下さん

 

■岡山高校生ボランティア・アワードについて

岸) ボランティア・アワードへの参加のきっかけ、なぜ参加したかと、実際に参加してみてどう感じているかを教えてください。みなさんに聞きたいですが、最初に誰からお聞きしましょうか。

山下) 私は、今年度これ(アワードの案内チラシ)が教室に貼ってあって、昨年もチラシが貼ってあったのは見ていたから、実はチラシを見ても「あ、去年のやつじゃん」と思っていました。ボランティア・アワードという言葉は目に留まるけども何かわからないし、ボランティアは、自分はしているし、プラスでボランティアするみたいなイメージだから、自分には必要ないと思ってスルーになっていました。けれども先生から、「山下はボランティアしているから参加してみたら?」と言われて、そういうことかと思って、参加することになりました。

近藤) 私は、こういうのに参加してみないと他の学校が何をしているのか知らないし、参加してみたら他の高校生が色々しているのを知ったので、すごいなと思ったし、参加して自分がしていることを知ってもらえるのも、「すごいね」と声をかけてもらって、うれしかったです。

池田) 本音を言うと椅子に座りっぱなしで結構長かったので…腰が痛かったです。感想は、他の人も高校生なのに活動とか言葉遣いとか、ほんとに高校生なのか、大人びてるなと思いました。

岸) アワードでは途中時間が押したこともあって、ちょっとうまくいかなかったところもありました。皆さんの率直な意見を参考にさせていただきます。

山下) アワードでは最後に、もうちょっと交流できたらなと思いました。私はこの会で1年半ボランティアを続けていることに、自分的に満足してきたんですけど、小さいころからボランティアずっとやっています、みたいな人がいて、自分の満足感はなんだったんだろうと思って、やる気が湧いてきました。

岸) それは良かったです。でもせっかくやる気になったのに、活動がコロナで中止になってしまいましたね。この活動は、二年生の探究活動で、それで終わりになりますか。

山下) そうですね、そういう人もいます。私は、3年になってもやります。

 


 池田さん

 

■「ボランティア」について

岸) 自分たちにとって、ボランティアってどんなことでしょうか。素直に感じていることを言ってもらえたらと思います。良いことも、そうでもないことも。

山下) 「みんなの気持ちが集まったもの」だと思います。ボランティアをやったことで、自分が何かをしてもらえるとかそういうものではないし、ボランティアでなかったら、こうこう、こうしてくださいとか、お金払うからやってくださいと言われると思うけれども。ボランティアは「自分で一から作っていく」し、「これは違うなと思ったら作り直して行ける」し、気持ちが集まることでボランティアがしっかりしていくと思います。

池田) ボランティアって、「自分の意志で参加するもの」だと思うんですよ。自分はボランティアが嫌いというわけじゃないんですけど、今回のは完全にちがいました…。
ボランティアは、中学生のときには夏休みにボランティアをするというのがあって、自分は3年間参加したりしたんですけど、「数少ない、社会人といっしょに活動できる、社会活動が経験できる貴重な場」だと思っています。

白幡) そうですね、でもときにはそういう自分からではない何かのキッカケで、ボランティアをすることもあって良いかなと思います。キッカケは色々かなと思っているんですよね。
それで、池田さんの参加したのは社会福祉協議会の「夏ボラ」ですか? 活動はどこに行って、どんなボランティアをしましたか?

池田) はい、夏ボラです。矢掛保育園です。3年間続けて同じところに行きました。小さい子たちが好きで、行きました。

白幡) 3年間続けて!でしたか。へぇ良いですね!どんな活動をしましたか?

池田) 外遊びを一緒にしたりとか、プールに入るのを面倒みたりとか。室内でも、お遊戯とかしたりしました。

岸) 近藤さんはどうですか?

近藤) ボランティアは「人の力にもなれるし、自分の力にもなるものだ」と思っていて、「ボランティアをされた側も助かったなと幸せな気持ちになる」し、「自分もふつうの日常生活では体験できないこと」も、「スキルがあがったり、視野が広がったりする」と思います。
私は将来子どもの関係の仕事に就きたいと思っているので、子どもとふれ合えるボランティアがあれば、積極的に行っています。

 


 近藤さん

 

 ■高校生の皆さんへのメッセージ

岸) では最後に、他にボランティアをしたい高校生へのメッセージをお願いします。

山下) ボランティアをする前に想像する不安とか、こうなったらどうしようという焦りがあるかもしれません。活動していく中でも、もっと不安が出てくるし、自分が経験したような悔しさとかももっと出てきます。けれどもそれがないと、ボランティアをやって良かったなとか、成長がないと思うので、最初の焦りや不安は必要なものだと思います。

岸) メッセージでもいいし、他の高校生をボランティアに誘う場合でもいいのですが、いかがですか。

池田) ボランティアは自分の意志でするものなので、他の人は誘わないと思います。だれか行きたい人がいたら、何か言うかもしれないけども。

岸) もし、興味あるんだけどと言われたら、どういう風に言いますか?

池田) 僕も普段からボランティアしているわけじゃないけども、興味があったら、一緒に行くよーと。

岸) 近藤さんはどうでしょうか。

近藤) 自分も不安とかあるんですけど、実際に体験してみると結構、変わります。だから積極的に挑戦してほしいです。

岸) 今日は色々とお話をありがとうございました。

 


  岡山高校生ボランティア・アワードにエントリー「べとぼらさん」(提供写真)

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