ボランピオ

vol.32(2021年03月号 )

【寄稿】アートによって、人とのつながりをつくる ~「ぬかつくるとこ」中野厚志さん

2021年03月31日 17:12 by youi_center
2021年03月31日 17:12 by youi_center

この記事は、大学生ライターによる寄稿です。
テキスト・編集:行徳彩音 堀井咲希 宮城佳乃子
(ノートルダム清心女子大学人間生活学科社会福祉士課程)

ぬかつくるとこってどんなところ?

成人期の障害がある方を対象とする「生活介護事業所ぬかつくるとこ」と、小学生から高校生を対象に日中一時支援事業と放課後等デイサービスを行っている「アトリエぬかごっこ」の主に2つの事業をしています。私たちは、「障害のある方のアート活動には魅力がある!」と話す、中野さんにインタビューを行いました!



活動のきっかけを教えてください

以前、障害者施設で働いていたときから、障害のある方の生み出す表現に興味があり、アート活動や表現活動をやってきました。「アート活動や表現活動を推し進めていきたい」「福祉の現場はきついと言われがちだけど、スタッフも楽しく笑顔で働ける職場をつくりたい」という想いから仲間と一緒に「株式会社ぬか」を立ち上げました。


活動の企画や工夫を教えてください

「福祉」「障害」というイメージよりもパーソナリティを大切にするため、個性が際立つようなデザインに工夫を凝らしたり、利用者のことを「ぬかびとさん」と呼んでいます。また、一般の人が見て良いと思ってくれるようなデザインであることも心がけています。活動はHP、Facebook、Instagramにアップしています。このことによって、県内外問わず、福祉関係者だけではなく一般の方も面白いなどと反応を示してくれ、遊びに来てくれます。一個一個の企画を作り上げることは気を使いますが、その過程が面白いです。企画の基本線としては「ギリギリアウトのところを狙いたい」と思っています。セーフとアウトのギリギリのところに面白さを感じています。


写真:「なんでそんなんエキスポ(*)」より
*2021年2月6日(土) 〜2月21日(日)に玉野市にある「HYM hostel 」で開催された博覧会 

写真:「なんでそんなんエキスポ」②

どのような地域社会や暮らしの実現を目指しているか教えてください

面白そうと事業所に集まってくれる人を増やし、フラットで色々な人に来てもらえる風通しの良い社会をつくっていきたいです。介護に重きをおく事業所なので、何かきっかけがなければ来ようと思う場所ではないと思います。それに対して、私たちは企画を組んだり、コンテンツをつくったり、ランチを用意したりするなど、いろいろな人に来てもらうきっかけを作っています。福祉だけにこだわらず、色々な人とつながりが生まれ、「面白い企画やってるね」とたくさんの人たちが自然に集まってくれています。そうすることで、ぬかびとさんをはじめ、私たちもつながっているという感覚が生まれてきます。

また、障害というイメージにとらわれるのではなく、健常の人と障害のある人との間にある壁が一番の障害だと感じています。特に「知らない」ということが一番の壁だと思っています。私たちのコンテンツによってその壁を壊し、自然な形でみんなが地域の中にいることができたらいいなと思います。



写真:「なんでそんなんエキスポ」③

インタビューを通して学んだこと考えたこと
行德:ぬかびとさんの行為一つひとつに役割を見出し、その行為を仕事として結びつけワークショップなどを行うことで、施設の中で完結せず社会とも繋がりをもつことができ、お互いに良い関係を築いていくことができるのだなと感じました。また、ぬかつくるとこ独自のアイデアの詰まった企画を実施することで、他の施設にはない新しい雰囲気づくりに繋がり、福祉だけに限らず様々な人が興味を持ち、新たなコラボレーションが広がっていくことを知りました。


堀井:健常な人と障害のある人との間にある「知らない」という壁を壊すためには、実際に障害のある人に関わることが大切だと私は思います。「HP、Facebook、Instagramに活動をアップすることで様々な人に興味を持ってもらう」「ワークショップやランチなどをきっかけに一般の人にも事務所に来てもらう」など、障害のある人を知ってもらったり、障害のある人と関わったりする具体的な仕掛けの大切さを知りました。また、企画の基本線はギリギリアウトのところを狙いたいとのことでしたが、それがあることによって、他にはない、多くの人が自然に集まってくれる面白い企画ができているのではないかと思いました。

宮城:ぬかびとさんの行為や、そこから生み出される作品を価値あるものとして成立させるための工夫が印象に残りました。イベントの際には単に作品を売るだけではなく、ぬかびとさんが講師となってワークショップを開催しています。ワークショップでは、参加者から料金をいただくようにもなっています。一般の人が「価値がある」と思ってくれるよう、ぬかびとさん自身や行為、作品を、どんな形で見てもらうか、ワークショップとして成り立たせるかということを大切にしているとわかりました。また、ぬかつくるとこには、ぬかびとさんのストレングスに注目し具現化していく柔軟性、アートに限らず、したいことをすれば良いという自由さ、一般の人も関心をもって訪れやすい間口の広さがあると感じました。このようなことが、中野さんがおっしゃっていた「風通しを良くしたい」という言葉につながっているように思いました。

中野さんのお話をお聞きして、健常者と障害のある人との間にある壁をなくすために、人とのつながりを意識しながら実践できる社会福祉士になりたいと強く思いました。

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